000-2 「働く」と「生きる」の境界を考える 後編

理系大学生の研究活動

前回は、当社の変遷をたどりながら、「生きる事」と「働く事」の境界を考えてみました。

中小企業経営者は、生活と仕事が一緒になっていて、リスクは抱えるけど、自分のやりたい事を仕事として追求できる存在、という事をご紹介しました。

現在働いている皆さんは、今の仕事にどのようにして就いたでしょうか。

今回は私自身が体験した事をご紹介しながら、「仕事を選ぶ」、「社会人になる」、入り口の部分である”就職”にフォーカスしてみたいと思います。

前回ご紹介しました通り、私は町工場の”3代目”として育ちました。

工場で働く父や祖父を横目に見ながら、小学校~高校までは普通の公立学校に通いました。

その過程で自然と”理系”の進路をイメージしていたのも覚えています。

(母からの刷り込みもあったかもしれませんが。。)

なんとなくそのまま理系の大学に進学しまして、大学院(修士)まで進みました。

理系の大学では学部4年から、”研究室”に所属して、”研究活動”を経験します。

通常は、大学卒業時に”卒業論文”として研究成果をまとめるわけですが、もっと専門的に突き詰めたい人は、大学院まで行き、修士、博士と学位を上げていくわけですね。

博士までいった人は、そのまま研究職を続け、大学教授を目指すような人が多いようです。

私は、町工場で生まれ育ったので、生産技術や機械系の研究室を選ぶつもりだったのですが、航空宇宙関係の研究室がありまして、申請締め切り寸前で希望順位を変更して、その研究室に入りました。

なんとなく、ぼやっと理系で進んできた自分にとっては、自分でもびっくりするような衝動的な行動でした。

理系の大学4年からは、研究室に泊まり込みで研究活動をしたり、学会での論文発表をしたりと、学業というよりも研究活動の色合いが強くなります。

自分の研究内容について、テーマを考え、推論をたて、調査し、考証して、結果をまとめます。

研究活動だけでなく、ビジネスにおける実業務にも通じる、PDCAを自分主体で少なくとも一回はぐるっと回す経験ができるわけですね。

この研究活動の中でも、協力いただける企業の方とも接触する機会も多いと思います。

私も宇宙機の概念検証というテーマで研究活動をしていまして、航空機メーカーのエンジニアや、航空宇宙研究機関の研究者、ラジコン飛行機製作の職人さんなどに大変お世話になりました。

学生時代にも、実際のビジネスと接触する機会が結構あるわけですね。

私の場合は、それがそのまま就職に繋がったわけですが、現在の仕事内容からすると余りに乖離がありますね。。

(実は第一希望は、ラジコン飛行機屋さんだったのですが、諸々の事情があり断念しました)

研究テーマ

図1 当時の研究活動内容

大学生にとっての就職とは

ところが、修士2年になる頃には、みんな一斉に就職活動を始めます。

就職に強いと言われる、理系の修士修了予定者でも、学部卒生と同じように就職活動をしていたわけです。

今から15年以上前の話ですから、現在はもう少し事情が異なるかもしれませんが、ある種異様な期間だったことを覚えています。

画一的に進学し、画一的に就職する、そんなシステム化されたキャリア形成の雰囲気を感じていました。

 大手の就職サイトに登録して、エントリーシートの書き方やSPIの問題集を買い、企業合同説明会に足を運び、、、

なんとなく、大きな会社、安定した会社に就職する=ゴールという、共通意識があったように思います。

インターンシップも制度として定着してきた時期でしたので、私も含め結構な人数がインターンシップを経験しました。

理系修士=ある程度の専門性があると言っても、就職する企業自体は自分で選んでエントリーしますが、その会社で自分のする仕事までは選べません。

入口に入るまでは自分の意思ですが、自分がその後何をさせられるのか全く分からないのです。

もちろん、企業によってその具合は異なります。

会社の技術系というカテゴリーまで、特定事業部の技術系というカテゴリーまで、特定事業部の技術系の中の職種(例えば生産技術、研究、開発など)までのエントリーなど、各社様々です。

航空機の技術職を希望していても、入社してみないと航空機なのか、造船なのか、産業機械なのかがわからないといった就職形態が多いのが印象的でした。

せっかく努力して学位を高めても、最終的にその努力が結実する就職の段階で、自分の希望がかなえられるかどうかがわからないのです。

これから多くの時間を費やす仕事を決める瞬間なのに、誰もそれには不満を感じず、そんなものだと受け入れているようにさえ感じました。

また、大卒者以上の就職活動では、基本的に中小企業を指向する学生はあまりいませんし、そのような入口を提示してくれるような情報源もありません。

よほど特殊な事情が無い限り、皆まずは一様に大手への就職を目指すように思います。

これは、セカンドキャリアを模索する際の”転職”時にも当てはまります。

中小企業への就職・転職の入口を!

私自身は現在中小企業の経営者という立場ですので、就職・転職時にもっともっと中小企業への入り口を模索する動きがあっても良いのではないかと思います。

もっと自由に学生や求職者が、中小企業にも可能性を感じられる場があると良いですね。

中小企業であれば、自分の仕事をはっきりとイメージできるはずですし、例えば「会社を大きくする」などのやりがいなども感じやすいと思うのです。

ただし、ファーストキャリアから中小企業に入った方が良いとは必ずしも思いません。

私自身もそうでしたが、新卒で比較的大きな会社に入り、大きなビジネスに触れ、多くの関係者と接触する事で、その後のキャリアでのビジネスの発想の幅が広がると思うからです。

この辺りの話は、2017年に東京理科大学の学生さんに講義をさせてもらいまして、MONOistさんにも取り上げてもらいました。

TOKYO町工場HUB モノづくりジャンクション: https://tokyo-fabhub.com/education/monozukuri-junction/

MONOist紹介記事: https://monoist.atmarkit.co.jp/mn/articles/1707/07/news012.html

学生の職業選択の意識

さて、ここまでは私の実際に経験してきた目線でお話をさせていただきましたが、皆さんはどうでしょうか。

自分の希望した就職や転職ができた方はどれくらいいらっしゃいますか?

あるいは、就職してみて「こんなはずじゃなかった」と思った方も多いのではないでしょうか。

現在の就職観がどのようなものか、マイナビさんの下記サイトに興味深いアンケート結果が掲載されていたのでご紹介したいと思います。

(http://mcs.mynavi.jp/enq/ishiki/data/ishiki_2019.pdf)

特に6ページ目が興味深いですね。

2001年卒~2019年卒までの、企業選択のポイントについてのアンケート調査がグラフ化されています。

大きく変化のある項目を抜き出すと、次のようになります。

<下がっている項目>

自分のやりたい仕事ができる:48%程度 → 38.1%

働きがいがある: 21%程度 → 13.7%

自分の能力・専門を生かせる: 16%程度 → 6.6%

<上がっている項目>

安定している: 18%程度 → 33.0%

休日・休暇が多い: 4%程度 → 10.1%

給料が良い: 7%程度 → 15.4%

やりたい事や働きがいよりも、安定していて、休暇が多くあるような仕事を求める傾向が強くなっている様子が窺えます。

仕事に対しての、ある種の諦めというか、割り切りのようなものを感じますね。

ただ、必ずしも大手が良いかというとそうでもないようです。

同様に5ページ目に1993年卒~2019年卒までの大手企業志向についてのアンケート結果が掲載されています。

理系男女、文系男女で別れたグラフですが、整理すると次の通りです。

1993年卒 64.2~66.1% (ピーク)

1999年卒 29.8~50.5% (1回目の底)

2008年卒 48.4~60.7% (2回目のピーク)

2013年卒 28.7~45.8% (2回目の底)

2019年卒 47.5~61.9% (直近)

この割合は、「絶対に大手企業が良い」+「自分のやりたい仕事ができるのであれば大手企業が良い」と回答した割合だそうです。

実際には1993年をピークにして、アップダウンがありながらも数値は若干下がっている状況です。

世の中の景気とも連動しているような感じですが、必ずしもみんなが大手企業を指向しているわけではない状況も垣間見えるのではないでしょうか。

また、3ページ目には、就職観についてのアンケート結果がまとめられています。

「収入さえあればよい」「個人の生活と仕事を両立させたい」「出世したい」などの項目の中で、2001年卒~2019年卒の変遷で大きく変化のある項目を抜き出すと次の通りです。

「人のためになる仕事をしたい」 8%程度→15%程度

「プライドの持てる仕事をしたい」 15%程度→6%程度

「自分の夢のために働きたい」 16%程度→12%程度

「自分のため」よりも、「人のため」に働きたいと考える若い方が増えているという事を示していそうです。

中小企業経営者の目線に戻しますと、働く側の「仕事」に求めるものが変化する中で、私達中小企業にとっても優秀な人材を確保するチャンスもたくさんあるのではないかと思います。

中小企業で働くという事は、自分の貢献が目に見える形でハッキリとわかる事が多いです。

当社であれば、「加工賃何円の部品をその日何個生産した」という風にです。

ある意味シビアで残酷かもしれませんが、自分の仕事と成果(=社会貢献)がはっきりと関連付けられているわけですね。

逆に大手企業は、一つのビジネスに多くの人が関わりますので、自分の成果がどの程度なのか具体的にわからないケースが多いと思います。

中小企業の働き甲斐とは!?

私がこのブログで主張したいのは、「中小企業の高付加価値ビジネス化」への転換を進める事です。

従来の、”不安定で”、”きつくて”、”退屈で”、”労働時間の長い”企業イメージではなく、

”成長していて”、”やりがいがあり”、”社会貢献できて”、”適正な労働時間の”企業への変換です。

働き方改革が叫ばれる昨今では、大手企業の多くでこういった変換が進んでいるように思いますが、中小企業こそ追求していくべきものではないでしょうか。

自分の仕事のアウトプット(=社会貢献)を直接的に感じられるのは、中小企業ならではなのではないかと思うのです。

働く人の満足度を上げる事、満足度のある仕事の仕方を構築する事は経営者にしかできません。

私は自分たちの仕事を高付加価値化していく事で、それが実現できるのではないかと考えます。

経営者がリスクを覚悟で、優秀な人材が「この中小企業で働いてみたい!」と思うような会社に変換していくべきではないでしょうか。

求人募集になかなかリソースを割けない中小企業の求人活動は、以前はもっぱら「ハローワーク」が主体でした。

しかし現在は、「Indeed」さんなど、無料で広告掲載ができて、直接的に求職者に訴求できるツールがあります。

求職者の”ニーズ”が変化し、多様化する中で、条件が合いさえすればマッチングしやすくなっています。

(実際に、当社もIndeedさん経由で多くの応募をいただいて、即戦力の採用を決めています。)

いま、社会貢献を感じられる職場として、中小企業の存在感を打ち出せる機会が増えていると思います。

優秀な人材が集まり、更に成長して訴求力を高め、、、とプラスのスパイラルが実現できると思うのです。

中小企業経営者が仕事を高付加価値化し、働く人の満足度を上げる事をみんなで進めていきませんか?

皆さんはどのように考えられますか?


TOKYOステンレス加工
TOKYO精密機械部品
TOKYO機械設計開発
株式会社小川製作所 ロゴ