109 日本経済の主役は「中小企業」

1. 日本の企業はどれだけあるのか?

前回はビジネスの流出一方の日本型グローバリズムについて取り上げてみました。

大企業などは海外進出を進め、多くのビジネスを現地法人で行っていることが分かりました。

国内に取り残された企業が、売上を伸ばすことなく、仕事のパイを奪い合っているという構図になっているようです。

今回からは、このような日本企業の状況についていろいろな方向から眺めていきたいと思います。

先日は日本企業全体の、売上、付加価値、人件費などの時系列データを取り上げました。

そしてこれらはいずれも、1991年のバブル崩壊以降停滞している実態がわかりました。

一方で、営業外利益や当期純利益、配当金、社内留保などは近年急激に増大しています。

企業活動が大幅に変化している状況が見て取れます。

参考記事: 日本企業の転換点と変質の正体

内閣総理大臣が変わり、中小企業の再編などについても注目が集まっていますね。

日本において、中小企業とはどのような存在なのでしょうか。

「企業」と聞くと、大企業が頭に浮かぶ方が多いのではないでしょうか。

しかし、これからご紹介させていただく統計データを見ていただく中で、日本経済においては中小企業こそ、私たち国民生活に身近な存在である事を感じていただけるのではないでしょうか。

ここからは、日本の企業を規模別に眺めていきたいと思います。

取り扱うのは、「法人企業統計調査」です。

この統計調査では、資本金による企業規模別に統計データが集計されています。

ここでは、日銀の短観データに合わせて、次のように定義して企業規模別のデータを取り上げていきます。

中小零細企業: 資本金1億円未満

中堅企業: 資本金1億円以上、10億円未満

大企業: 資本金10億円以上

また、資本金1,000万円未満を零細企業、1,000万円以上1億円未満を中小企業とします。

また、非営利目的の法人などは、この統計に入らないと思います。

したがって、公務員などはこの統計の範囲外になりますね。

日本の企業規模の定義の仕方には、資本金と従業員数、そして業態(製造業なのか、サービス業なのかなど)によって、細かく規定されていますが、ここではあくまでも資本金のみで区分します。

(政府統計では、このように企業規模に関しての統一的な区分がなされていないので、非常に扱いにくいです)

まず、企業数についてみてみましょう。

企業数 企業規模別

図1 企業数 企業規模別

(法人企業統計調査 より)

図1が企業数のグラフです。

1960年からの長期時系列データです。

中小零細企業は左軸、中堅企業と大企業は右軸です。

中小零細企業は2005年あたりで鈍化は見られますが、基本的には右肩上がりで増加しています。

直近では、279万社となり、全企業の99%を占めます。

中堅企業は約2万5,000社で0.9%、大企業は約5,000社で0.1%です。

少し意外ですが、中堅企業と大企業は、近年減少傾向にあるようです。

特に中堅企業は2008年以降で大幅に企業数を減らし、大企業も2002年あたりから減少傾向のようです。

ちなみに、日本の中小企業は多いという論調を最近多く見かけます。

確かに絶対数としては先進国の中でも多い方ですが、人口当たりの中小企業数ではむしろ少ない方です。

参考記事: 日本の中小企業は本当に多いのか!?

2. 労働者の分布は?

次に、それぞれの企業規模別に、どれだけの労働者が働いているのか見てみましょう。

従業員数 企業規模別

図2 従業者数 企業規模別

(法人企業統計調査 より)

図2が企業規模別の従業員数(期中平均)です。

全体としては基本的には右肩上がりで増大していますね。

もちろん、今まで見てきたように、近年でこれだけ労働者数が増えているのは、女性と高齢者の労働者が増えたためです。

労働世代の男性労働者数はむしろ減少しています。

労働者数では圧倒的に中小零細企業で働く人が多いですね。

直近では、企業で働く労働者約4,300万人のうち、中小零細企業が約2,900万人、中堅企業が約700万人、大企業が約800万人です。

特徴的なのは、中小零細企業と中堅企業は右肩上がりで増加しているのに対して、大企業の労働者は1993年あたりから停滞しているように見えます。

実は大企業の労働者は、停滞かむしろ減少傾向にあるのです。

従業員数シェア 企業規模別

図3 従業員数シェア 企業規模別

(法人企業統計調査 より)

図3が企業規模別の従業員数のシェアです。

中小零細企業が70%前後、中堅企業が15%前後、大企業が20%前後のシェアです。

近年ではやや中小零細企業のシェアが小さくなり、中堅企業のシェアが大きくなっています。

1960年から、実に60年近く、シェアがほとんど変わらないというのは不思議ですね。

企業に勤める労働者のほぼ7割が中小零細企業に勤めているという事になります。

大企業や中堅企業に勤める労働者よりも、中小零細企業の労働者の方がマジョリティである、という事は是非覚えておいてほしいと思います。

3. 付加価値はどれくらい稼いでいるのか?

次に、各企業規模別の付加価値額について見てみましょう。

図4 付加価値 企業規模別

(法人企業統計調査 より)

図4が付加価値額の推移です。

付加価値は、その企業の事業活動によって加えられた「仕事の価値」ですね。

直近では全企業で約320兆円のうち、中小零細企業で約160兆円、中堅企業で約50兆円、大企業で約105兆円といったあたりです。

GDP(国内総生産=1年間の付加価値の合計)は直近で約540兆円ですので、法人企業だけで約6割の付加価値を生み出しているという事になります。

1990年を境に、付加価値は急に停滞し始めます。

やはりバブル崩壊の影響によるものと考えられますね。

大企業、中堅企業では2010年頃からやや上昇傾向が見られます。

付加価値シェア 企業規模別

図5 付加価値シェア 企業規模別

(法人企業統計調査 より)

図5が付加価値のシェアです。

概ね中小零細企業が50~60%、中堅企業が15%前後、大企業が30~40%といったあたりのようです。

1990年以降は中小零細企業のシェアが縮小気味で、中堅企業、大企業のシェアが大きくなってきているようです。

直近では中小零細企業が約50%、中堅企業が約16%、大企業が約34%のシェアですね。

付加価値の半分は中小零細企業が稼いでいる、という事も重要な数値と言えそうです。

いかがでしょうか、今回はまず日本の法人企業について、企業数、従業員数、付加価値を取り上げてみました。

私たち日本国民にとって、中小零細企業は企業数では99%、従業員数では7割、付加価値では50%のシェアを占める存在です。

むしろ大企業よりも、少なくとも数値上は身近な存在である事を感じていただけたのではないでしょうか。

ただ、7割という圧倒的多数が関わる中小企業で、稼ぎ出す付加価値が50%に過ぎないわけですね。

1人当たりの生産性に、大企業や中堅企業との大きな隔たりがある、という事になります。

これが中小企業が生産性が低いと言われる理由なのだと思います。

中小企業を再編する、あるいば淘汰していく、という論調が強まっていますが、果たしてそれで良い結果に繋がるでしょうか?

経営者の怠慢により、労働者を搾取し、単にゾンビ企業として生きながらえているだけのような企業は別としても、多くの中小企業は皆必死で生き延びようとしているはずです。

その中小企業に多くの国民が労働者として雇用されているわけですね。

必要なのは、中小企業の淘汰ではなく、中小企業がいかに付加価値を多く稼ぎ出せるか、という視点ではないでしょうか。

大企業がグローバル化の波に飲み込まれ、国民生活から切り離されつつある中で、中小企業こそ時代の変化に柔軟に合わせながら国民生活に密接に関わる存在のはずですね。

その中小企業が稼げなくなった、という事が問題のはずです。

「日本経済の主役」である中小企業と、そこで働く労働者=多くの国民が豊かになっていく事こそ、日本経済が復活していく本来の道なのではないでしょうか。

皆さんはどのように考えますか?

次回以降も企業規模によるデータを見ながら、この問題について考えていきたいと思います。

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