107 最低賃金と所得格差の関係

1. 日本の最低賃金の割合は低いのか?

前回はドル換算で見たOECD各国の最低賃金についてご紹介しました。

日本は8.0$/時間程度で、比較的先進国のOECDの中では中程度の水準である事が分かりました。

また、年々少しずつ最低賃金もあがっていますが、日本より水準の低い国の方が伸び率が高く、近いうちに逆転される可能性についても感じていただけたと思います。

最低賃金は、その国の経済水準にも依存しますので、単に最低賃金の金額だけ見ても実態は見えてこないと思います。

今回は、最低賃金と所得水準の割合について着目してみたいと思います。

最低賃金比率 OECD 2019年

図1 最低賃金比率 2019年

(OECD 統計データ より)

図1は、所得中央値や所得平均値に対する最低賃金の割合(ここでは最低賃金比率と表現します)を示します。

所得の中央値や平均値に対して、最低賃金がどれくらい保証されているか、といった観点ですね。

比較的上位には、コロンビアやトルコなど経済発展中の国が並びます。

コロンビアやトルコはほぼ所得中央値に近い金額が最低賃金で保証されていることになります。

イギリス、カナダ、ドイツなどは中位くらいに位置しますね。

概ね所得中央値に対して40%後半から50%半ばくらいでしょうか。

日本は、所得中央値に対して44%、平均値に対して38%といった水準で、下位に属します。

中央値に対して半分も保証されていないわけですね。。。

断トツの最下位はアメリカですね。

所得中央値に対して、最低賃金は32%に過ぎません。

残念ながら、日本の最低賃金の水準はまだまだ低いと言えそうです。

2. 最低賃金比率は上昇しているのか?

それでは、日本の最低賃金比率は昔から低いままだったのでしょうか?

その推移についても見てみましょう。

最低賃金比率 推移

図2 最低賃金比率 推移 日本

(OECD 統計データ より)

図2は日本の最低賃金比率の時系列データです。

最低賃金/平均値も最低賃金/中央値も連動して推移しているのが分かりますね。

1997年以降は所得水準は停滞していますが、最低賃金額は増加していますので、最低賃金比率は上昇傾向にあります。

昔は、最低賃金/中央値でも30%未満だったというのは驚きですね。

最低賃金は当然所得水準に応じて上昇していくはずですので、本来は最低賃金比率は横ばいとなるのが一般的と思います。

フランスやカナダなどでは、横ばいのグラフになります。

日本の場合は所得水準が停滞しているため、このような右肩上がりのグラフになるわけですね。

3. 最低賃金の所得格差に関係はあるのか?

それでは、最低賃金は所得の格差解消になるのか、といった事を相関図で見てみましょう。

最低賃金 所得格差 相関図 OECD 2018年

図3 最低賃金 所得格差 相関図 2018年

(OECD 統計データ より)

図3が最低賃金と所得格差を1つのグラフにまとめたバブルチャートです。

横軸が最低賃金の水準(最低賃金/所得中央値)、縦軸が格差(所得の第9/第1十分位数)です。

所得十分位数は、所得を低い方から順に並べていった分布を考えた場合、人数を10等分する9本の線です。

第1十分位数から、第2十分位数、、、第5十分位数(中央値)、、、第8十分位数、第9十分位数という線ですね。

「最も貧しい層」を規定するのが第1十分位数、「最も豊かな層」を規定するのが第9十分位数と言えます。

そして、「最も貧しい層」と「最も豊かな層」の割合を規定するのが、第9十分位数/第1十分位数となります。

つまり、「最も豊かな層」が、「最も貧しい層」の何倍の所得を得ているか、という格差を表す指標ですね。

所得十分位数の詳細につきましては、こちらをご参照ください。

 参考: 男女間の所得格差はどれくらい?


バブルの大きさが、その国の平均所得の大きさを示します。

(平均所得は直径に比例します)

バブルの色が1997年→2018年での平均所得(購買力平価調整済みドル換算)の変化を示します。

赤が2.5倍以上、黄色が1.6~1.8倍、黄緑が1.4~1.6倍、緑が1.2~1.4倍、水色が1.1~1.2倍、青が1.0~1.1倍、グレーが1.0倍未満です。

アメリカとイスラエルの位置が随分と異質な感じがしますね。

ひとつ言える傾向としては、最低賃金/中央値が0.4~0.5のあたりで、格差が小さい国が低成長(日本、ギリシャ、スペインなど)で、格差が大きい国(ラトビアなど)が経済成長率が高いという事です。

最低賃金比率が小さくて、格差が小さい国で経済成長率の低い国がまとまっています。

日本は、ベルギーとともに、最も経済格差が小さく、最低賃金比率の小さい国の一つと言えそうです。

例えばニュージーランドは、日本よりも格差は小さいですが、最低賃金比率が大きく、それなりの成長をしていますね。

フランスも同じような状況です。

全体を眺めてみると、何となく最低賃金比率と所得格差には負の相関があるようにも見えます。

つまり、最低賃金比率が大きいほど所得格差が小さいという関係ですね。

アメリカとニュージーランドを結ぶ線を基準線として考えてみると、日本やギリシャなどの経済成長率が小さい国は、少し外れている位置にいます。

経済的にうまくいっていない国々は、この基準の線からマイナス側に外れている、とも解釈できるかもしれません。

つまり、格差の水準の割に、最低賃金比率が小さいという事ですね。

もしかしたら、日本は最低賃金比率をもっと引き上げれば、経済成長率も上向くというようにも読み解けるかもしれません。

日本は格差は小さいけど、最低賃金も低い国です。

ただし、所得分布の形を良くイメージしてみると、中央値も、第1/第9十分位数の数値も同じとした場合、最低賃金/中央値の数値が小さいという事は何を意味するでしょうか?

恐らく、第1十分位数よりも低所得側(第1十分位)の分布がより平坦に広がるような形となるのではないでしょうか。

つまり、”低所得層の中での格差が大きい”という事が言えるのだと思います。

図4 低所得層の格差イメージ

イメージとしては、図4のような感じなのかと思います。

(A)の状態よりも(B)の状態で赤い矢印の範囲、つまり第1十分位(最貧層)の幅が広いイメージですかね。

日本はこのような分布になっている可能性がある、という事が示されているのかもしれません。

最低賃金を引き上げる事で、最貧層の格差を是正する事が経済成長に繋がるのかもしれませんね。

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