103 貧困化が進み格差が拡がる日本

1. 所得分布の類型とは?

前回は、日本やアメリカ、韓国などの所得格差の推移にフォーカスしてみました。

徐々に低所得層の割合が増えて格差が拡がる日本や、アメリカ、途中から低所得側の格差が縮まる事で全体の格差が縮小し始めた韓国、少しずつ格差が縮小し続けるフランスなど、各国で状況が異なることが分かりました。

今回はせっかくですので、OECD各国の格差と分布の状況が一目でわかるようなグラフをご紹介したいと思います。

一生懸命グラフ化を試みたつもりなのですが、かえってマニアックな内容となりました。

ご興味の無い方は読み飛ばしてください。

(私自身が人口や社会科学の専門家ではないので、見当違いな分析であった場合はご容赦ください)

第5十分位数(中央値)と、第1十分位数、第9十分位数の比を使って、所得分布の形を推定できる事は前回取り上げました。

所得の低い方から並べていった分布に対して、ちょうどその人数が半分になる線の値を中央値(第5十分位数)と言います。

下位10%の人数になる線が第1十分位数、上位10%を区切る線が第9十分位数ですね。

所得分布はこれらの数値の比を使ってある程度推定できそうです。

すなわち、中央値に対して高所得側の格差を示す第9/第5十分位数と、低所得側の格差を示す第5/第1十分位数です。

十分位数についての詳細は、以前の記事をご参照ください。

  参考記事: 男女間の所得格差はどれくらい? 

  参考記事: 日本人の所得格差は大きいのか?

図1 所得分布の類型

図1をご覧ください。

第5/第1十分位数を横軸に、第9/第5十分位数を縦軸に置くと、プロットされる位置によって所得の分布状況を推定できるという相関図です。

(分布については素人なので、想定を含みます)

究極に格差の無い状況が、このグラフの原点ですね。

すなわち、第5/第1十分位数=1.0かつ、第9/第5十分位数=1.0です。

第1十分位数=中央値=第9十分位数となって、全ての人がまったく同一の所得を得ている事を示します。

分布を敢えて描くと中央値のところに一本だけ線が立っている状態で、所得格差の全くない状態です。

そのような状態は通常考えられないので、まず架空の分布(A)を考えてみます。

(A)は横軸も縦軸も値が小さく、低所得側も高所得側も対照の分布をしています。

これが、第5/第1十分位数も、第9/第5十分位数も大きくなると、(B)のような分布に移ります。

(A)と同様に中央値に対して対照の分布ですが、分布の幅が広がります。

つまり(A)に対して(B)は格差が均等に広がった状態です。

更に進むと、(B)は(C)のような状態に変化すると思います。

低所得側と高所得側に二つの山ができるイメージですね。

低所得層と高所得層に2極化していく分布のイメージです。

(A)→(B)→(C)の変化は中央値に対して対照の分布をした場合の変化ですね。

一方で、第5/第1十分位数は同じでも、第9/第5十分位数が大きくなる場合を考えましょう。

すなわち、(A)→(D)の変化です。

この場合は、低所得側は変わらないけれども、高所得側がグッと伸びるような分布になるイメージですね。

つまり、相対的に低所得層に大きなボリュームがあって、極端に大きな所得を持った層が高所得側に存在する分布と言えます。

逆に、第9/第5十分位数は変わらないけれども、第5/第1十分位数が大きくなると、(A)→(E)のような変化になりますね。

一部の極端な貧困層と、ボリュームの大きな高所得層という分布です。

実際に(E)のような分布はあまり現実には無さそうですが、、、

2. 所得の格差と分布の相関図

それでは、OECD加盟国の所得と格差についての相関図を見てみましょう。

所得 格差分布 男性 2014年

図2 所得 格差分布 男性 2014年

(OECD 統計データ より)

図2が2014年の男性の所得分布の相関図です。

日本以外のG7と韓国については、1997年から2014年の変化を表しています。

線の終点(〇)が2014年、線の始点が1997年を表します。

日本だけ1975年から直近の2019年までの長期変化を表現しています。

第5/第1十分位数と第9/第5十分位数が同じになる線を点線で示しています。

この線上に位置していると、中央値に対して、低所得側、高所得側の分布がほぼ同じになるはずです。

一方で、この線よりも上側に位置していると、相対的に低所得層のボリュームが大きい分布となります。

基本的にはほとんどの国が上側のエリアに位置していますね。

また、第9/第1十分位数が一定となる曲線も表現しています。

第9/第1十分位数は、トータルでの所得格差を表しますので、この線上にあると分布の形は異なっても、格差の程度は同水準である事を示します。

それでは、具体的に各国の分布を見てみましょう。

意外にも所得格差が小さいのはイタリアですね。

かなり原点に近づいた位置にあります。

その他、スウェーデン、ベルギー、フィンランド等が格差の小さい国と言えそうです。

一方で、アメリカ、韓国はかなり格差が大きいですが、動きを見ると格差が更に拡がる方向に向かっている事がわかります。

(韓国はその後、やや格差が縮小する方向に動きます)

ドイツはもともと日本と同じくらいのところに位置していましたが、グッと格差が拡がる方向に向かっていますね。

トルコはドイツと同じレベルの格差ですが、分布の形が随分と異なりそうです。

低所得層がかなり大きい分布で、図1の(D)のような形と考えられます。

チリもトルコと同じ様な分布と考えられますが、より格差が開いている状況ですね。

カナダは(E)のような珍しい分布だったのが、大分バランスの取れた分布に移動してきているようですね。

それでも格差は若干開いているようです。

フランスは第9/第5十分位数にほとんど変化はありませんが、第5/第1十分位数が小さくなって格差が縮小している状況です。

G7の中でも格差は小さい方ですが、位置(分布)が特殊ですね。

低所得層が多く、極端に所得の高い一部の層が存在する分布と言えます。

高所得者が多いイメージのルクセンブルクが近い分布というのも興味深いですね。

日本は比較的格差の小さい国と言えますが、1975年の位置からすると徐々にグラフの上方に移動していることが分かります。

グラフの上方に向かうという事は、図1(D)のように低所得層の割合が大きい分布に変化しているという事ですね。

第9/第1十分位数も、若干大きくなっていますので少しずつ格差が拡がっている事を示します。

つまり、日本は少しずつですが、低所得層が相対的に割合を増しながら、全体の格差が開いている事を示します。

3. 女性の分布も見てみよう!

所得 格差分布 女性 2014年

図3 所得 格差分布 女性 2014年

図3が同様にまとめた女性の格差と分布の相関図です。

男性と比べると原点側にギュッと寄った分布をしていますね。

男性に比べて、女性の方が全体的に格差が小さいという事を示すと思います。

もちろん、男性の所得に対して、女性は総じて所得水準が低く、そもそも男女間での格差があります。

ここで示されるのは、あくまでも女性の労働者の中での所得格差を表現している事にご注意ください。

大よその各国間の位置関係は男性に似ています。

やはりスウェーデンやイタリアが左下に位置しているので、格差が小さい国と言えそうです。

韓国、アメリカ、ドイツは右上に向かっていますので、格差が拡がる方向、フランス、カナダは左上に向かっています。

フランスもカナダも左上には向かっていますが、第9/第1十分位数はやや大きくなっていますので、全体の格差は広がっています。

日本は1975年から2019年のグラフとなりますが、同じくらいのところをグルグル回っている感じですね。

それでも他の国と比べると格差は小さいようです。

今回は少し風変わりなグラフで、うまく説明できたかわかりませんが、いかがでしたでしょうか。

所得十分位数の指数を使って、所得格差と分布の相関を見てみました。

格差が拡がる国もあれば、縮小する国もあり、各国とも特徴のある分布や動きをしているようです。

日本は比較的格差の小さい国と言えますが、それでも男性は徐々に低所得層が増えながらも格差が開いていく傾向にあるようです。

気を付けなければいけないのが、今回のグラフはあくまでも分布の形を定義するだけ、という事です。

つまり、全体として中央値が下がっているかどうか、は表現されていません。

通常は中央値が上がりながら、分布の形が変わっていくのだと思いますが、日本の場合は中央値(や平均値)は下がっています。

つまり全体的に貧困化が進みながらも、低所得層が増えて格差が開いていく傾向にある、という事が今回示されたことになります。

日本が経済停滞から抜け出すためには、大きな中間層を持つ必要があると言われていますが、現状としてはむしろ逆で、中間層が薄まって格差が拡がっている事が言えると思います。

まずは全体として所得水準を上げながらも、格差を減らしていく事が必要なのかもしれません。

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