101 日本人の所得格差は大きいのか?

1. 所得格差はどれくらい?

前回は、OECD各国の男女の所得格差について取り上げてみました。

日本は韓国とともに、男女の所得格差が大きい国であることが分かりました。

男性に比べて、女性の方が所得が低いという事ですね。

日本経済が停滞している事を端的に表しているのが、男性労働者の所得減少だと思います。

男女の所得格差が大きいため、女性の労働参加率が上がって、平均所得が下がっているのかと思えば、男性だけを切り取って見ても平均所得が下がっているという事を何度か取り上げてきました。

参考: 続・サラリーマンの貧困化

参考: はたして結婚は贅沢なのか!?

女性は様々な所得の労働者が増えているのに対して、男性は低所得層が増えて平均値が下がっている状況です。

それでは、日本の男性の所得の格差は大きいのか、小さいのか、OECD各国の中で比較してみましょう。

所得 第9/第1 十分位数 男性 2014年

図1 所得 第9/第1 十分位数 男性 2014年

(OECD 統計データ より)

図1はOECD各国の、所得 第9/第1 十分位数のグラフです。

2014年の男性労働者のグラフとなります。

所得 十分位

図2 所得 十分位

まずは所得十分位のおさらいをしてみましょう。

ある集団の所得の分布が図2のようになっているとしましょう。

この分布の人数が均等に10分割できるように区切る線を、それぞれ低い方から第1十分位数、第2十分位数・・・、第9十分位数と呼びます。

区切られたエリアを第1十分位、第2十分位、・・・、第10十分位とよびます。

第5十分位数が、人数をちょうど2等分する線=中央値という事になりますね。

第9/第1十分位数は、所得の分布のうち、最も所得の高い層(第10十分位)を区切る線(第9十分位数)と、最も所得の低い層(第1十分位)を区切る線(第1十分位数)との割合を示します。

分布の形

図3 分布の形

図3をご覧ください、同じ位置に中央値があっても、分布の形が異なることを示しています。

(A)は中央値のあたりにギュッと寄っている分布で、(B)は低所得側にも高所得側にも広がった形をしています。

当然(A)の方が(B)よりも一定範囲に分布が限られているので、所得格差が小さい事になりますね。

(A)は中央値に寄っている分だけ、第1十分位数と中央値、中央値と第9十分位数との距離が近くなっています。

(B)は広がっています。

この分布の広がり方を数字的に表すのが、第9/第1十分位数と言う事になります。

第9/第1十分位数が大きければ最も貧しい層と最も豊かな層の差が大きい事になり、格差が大きい事を示しますし、小さければ格差が小さいという事になりますね。

もう一度図1を見てみましょう。

比較的、所得水準の低い国(東欧等)や、経済発展の大きな国(韓国など)が上位に来ていて、所得水準の高い国が中位~下位にいる事がわかると思います。

最下位集団に、日本や北欧諸国、イタリアが含まれます。

アメリカはさすがに所得格差が大きいようですね、OECDで二番目の水準で5.3です。

第1十分位数と第9十分位数が5倍以上の開きがあることを示します。

日本は2.89で、OECD平均の3.54を大きく下回ります。

後に続くのが、フィンランドやノルウェー、スウェーデンなどの北欧諸国とイタリアくらいです。

日本は、平均所得は下がっていますが、所得分布という観点では、格差が小さいという事が言えそうです。

2. 中央値との比較もしてみよう

図1は第9/第1十分位数をあらわしていますので、もっとも豊かな層と最も貧しい層との格差を表す指標と言えます。

折角ですので、中央値との差を表す指標についても行きましょう。

すなわち、第5/第1十分位数と、第9/第5十分位数です。

図4 所得分布 中央値との比較

例えば(A)と同じ中央値を持つ分布(C)と(D)があるとします。

(C)は(A)と同じ中央値と第9十分位数ですが、低所得側に伸びた分布を持っています。

つまり、第1十分位数が(A)に比べて小さい事になりますので、第5/第1十分位数は大きくなります。

(C)の分布は、比較的高所得層に多くの分布があり、一部に低所得層を持つ事を示します。

逆に(D)は中央値と第1十分位数は(A)と同じですが、高所得側に伸びた分布を持っています。

つまり、第9分位数が(A)に比べて大きい事になりますので、第9/第1十分位数が大きくなります。

(D)の分布は、低所得層に大部分が集中していますが、一部に超高所得層が存在するという事を示す事になると思います。

このように、第5/第1十分位数と第9/第5十分位数によって所得分布の形がある程度推定できますね。

所得 第5/第1十分位数 男性 2014年

図5 所得 第5/第1十分位数 男性 2014年

(OECD 統計データ より)

図5が第5/第1十分位数です。

中央値と低所得側との格差を表す指標と言えます。

アメリカが最も格差が大きく、トルコが最も小さいのが印象的ですね。

トルコはこの中でも経済発展が著しい国ですが、大多数が低所得層で占められているという状況という事ですね。

日本は1.61でこの中ではやはり下位に属します。

最も貧しい層と中央値との間の格差が1.6倍程度です。

やはり、フィンランドやスウェーデンなどの北欧諸国は数値が小さいようです。

第9/第1十分位数では日本よりも数値の大きかったフランスが、第5/第1十分位数では数値が小さい事も興味深いですね。

所得 第9/第5十分位数 男性 2014年

図6 所得 第9/第5十分位数 男性 2014年

(OECD 統計データ より)

図6が第9/第5十分位数のグラフです。

最も豊かな層がどれだけ中央値から離れているかを表す指標です。

チリやコロンビア、トルコなどの比較的所得水準の低い国が上位に並びます。

トルコは第5/第1十分位数では最も数値が小さかったのですが、第9/第5十分位数では3番目に大きな数値を誇ります。

トルコは圧倒的大多数が低所得層で、一部の超富裕層が存在する分布である、という事が言えそうです。

図4の(D)のような分布の典型例と言う事ですね。

アメリカや韓国も大きな数値です。

フランスも比較的大きな数値ですね。

第5/第1十分位数は小さいのに、第9/第5十分位数が大きめの数値なので、トルコに近い形の分布と言えそうです。

ここでもやはり、イタリアや北欧諸国とともに日本は下位グループに入ります。

つまり、一般的な層(中央値)と富裕層(第9十分位数)との格差が小さい国と言う事ですね。

今回は、十分位数の指標を見る事で、所得格差の形をご紹介しました。

日本は中央値に対して、低所得側も高所得側もかなり近い分布をしていて、全体的に格差の小さい国と言えそうです。

ただし、今回取り上げたグラフは、数値の大小そのものはなく、単に分布の形を表現したものに過ぎません。

日本の場合は、中央値そのものが1997年のピークから下がっている事ですね。

日本人労働者の所得中央値については、正確なデータが見当たりません。

平均所得で言えば、1999年に579万円だったのが、2017年には536万円に減っています。

当然中央値も近い割合で減少しているものと考えられますね。

日本は所得は下がっているながらも、格差が小さい国ですね。

つまり、労働者全員が貧困化している、という事を表している事になります。

事業規模・年齢層別平均給与の推移 男性

図7 事業所規模・年齢層別平均給与の推移

図7は男性の事業所規模・年齢層別の平均給与の推移を表したグラフです。

1999年と2018年の変化を表していますが、全ての層で下向きの動きになっていますので、平均給与が下がっています。

特に60歳以上の高齢層が減少幅が大きいですが、40代、50代も事業所規模関係なく相当な割合で減少していて勝ち組がいない状況ですね。

30歳未満の若手の減少幅が比較的小さいのは救いでしょうか。

みなさんはどのように考えますか?

このブログの主旨にご賛同いただき、応援していただけるようであれば、是非下記バナークリックにてアクセスアップにご協力いただけると嬉しいです。

にほんブログ村 経営ブログへ
にほんブログ村