068 私たちの資産は本当は増えてる?

1. 私たち(家計)の金融資産はどのような状況か?

前回は、日本銀行の資金循環統計を取り上げました。

「家計」、「企業(非金融法人企業)」、「金融機関」、「政府」、「海外」の経済主体について、

「資産」、「負債」とそれらの差し引きの純資産(純負債)である「資産・負債差額」の推移をご紹介しました。

詳しくは日本銀行の統計データをご参照ください。

日本銀行 資金循環 統計データ: https://www.boj.or.jp/statistics/sj/index.htm/

純資産は家計が一方的に増え続けています。

また、企業は大きく純資産がマイナスですが、一定水準で停滞しています。

その代わり、政府と海外の純負債が増大している状況ですね。

今回は、一方的に増え続ける「家計」について取り上げてみたいと思います。

家計 金融資産・負債 積上 日本銀行 資金循環統計

図1 家計 金融資産・負債 積上

(日本銀行 資金循環統計 より)

図1が「家計」の金融資産・負債の積み上げグラフです。

資産ははプラス(青系)のグラフ、負債はマイナス(赤系)のグラフで表現してあります。

正味の資産・負債差額(純資産)は黒の折れ線グラフで表現しています。

資産は右肩上がりで増えていき、直近では1855兆円に上ります。

日本の家計は1800兆円の資産がある、と言われるのはこの数値ですね。

負債は1990頃までは増えていき、増大の勢いが鈍化した後1997年からむしろ減少して約300兆円程度で停滞しています。

正味の資産・負債差額は2006~2007年に一度ピークをつけて一時的に減少に転じますが、趨勢的には増大し続けており、直近の2018年には1531兆円となります。

”国民1人当たり”にすると1,200万円くらいは純資産がある計算になります。

大人も、子供も、、、です。

5人家族なら、平均で6,000万円の純資産がある計算ですね。

積上げグラフだとそれぞれの詳細が分かりにくいので、もう1つグラフをご紹介します。

2. 増え続ける現預金・停滞する負債

家計 金融資産・負債 詳細 日本銀行 資金循環統計

図2 家計 金融資産・負債 詳細

(日本銀行 資金循環統計 より)

図2が資産、負債それぞれの項目ごとの詳細グラフです。

資産は、「現金・預金」、「債務証券」、「株式等・投資信託受益証券」、「保険・年金・定型保証」、「その他」に分けられます。

負債は、「貸出」、「その他」に分けられます。

「債務証券」は内閣府によれば、以下のように定義されるようです。

「債務証券は、発行主体に償還義務のある証券形態の金融債権を指す。具体的には、証券形態の金銭債権として、金融商品取引法上の有価証券のほか、同法の対象とならない私法上の有価証券が含まれる。具体的には、国庫短期証券、国債・財投債、地方債、政府関係機関債、金融債、事業債、居住者発行外債のほか、CP(コマーシャル・ペーパー)、信託受益権、債権流動化関連商品が含まれる。」

国債などの公的な債権だと考えておけばよさそうですね。

「株式等・投資信託受益証券」は、一般企業等の株式や投資信託のファンドからの利益を受ける権利(受益権)との事です。

資産運用として、個人で株式投資などを行っている場合の資産価値を合計したものですね。

「保険・年金・定型保証」は、生命保険、年金保険などの受給権です。

「貸出」は金融機関からの借り入れ(借金、ローン)ですね。

まず目につくのが、「現金・預金」が右肩上がりであることです。

常に上昇し続け、直近の2018年には980兆円と1,000兆円に迫ります。

次に多いのが「保険・年金・定型保証」です。

やはり趨勢的に右肩上がりで直近で527兆円となります。

内訳を見ると、「生命保険受給権」219兆円、「年金保険受給権」99兆円、「年金受給権」152兆円となります。

「年金保険受給権」は、生命保険と共済保険に含まれる機関が個人年金保険の将来の支払いに備えるために積み立てている準備金、とのことです。

「年金受給権」は、企業年金とその他年金基金に分類される各機関において、契約者が将来受け取ると見込まれる年金額、とのことです。

つまり、「保険・年金・定型保証」は、現在家計では保有していないけれども将来受給が決まっているお金ですね。

統計上は、家計が資産として保有していることになっています。

株式等については、100~300兆円で推移している状況ですね。

負債の方を見てみると、「貸出」は1999年のピークからマイナス300兆円くらいのところで推移しています。

貸出のうち最も大きい割合を占めるのが、「住宅貸付」(いわゆる住宅ローン)ですね。

直近では209兆円となります。

住宅貸付は1999年から2011年頃まで180~185兆円程度で停滞していました。

2012年頃から徐々に増え始め、直近で209兆円という事ですね。

不景気が続いたため住宅ローンを借りる人が伸び悩んでいて、最近では少し景気が良くなってきたので徐々に増えてきたというところでしょうか。

さて、上記のように家計の資産や負債について詳細を見てきましたが、本当に私たちはこんなにも純資産を持っているのでしょうか。

失われた30年にもなろうという長期の停滞の中で、私たち労働者の給与は低く抑えられ、貧困化が進んできたという事はこれまでもさんざん触れてきたところです。

ただ、その裏ではこれだけ純資産が積みあがっているという事ですね。

もちろん、大きくはこの20~30年の停滞の中で、給与所得者も2極化が進み、高所得者層(いわゆる勝ち組)と低所得者層(負け組)に分断されている事も大きな要因だと思います。

飛びぬけた高所得者の資産が大きくプラスに計上されて、全体を底上げしているのは確かだと思います。

また、女性や高齢者の労働参加率の増加で労働人口そのものが増えている事もあると思います。

男性労働者も含め平均給与は下がっていても、労働人口が増えているので、給与所得の総額も増えているわけですね。

平成元年(1989年)と平成30年で比べた場合、給与所得者数と給与総額は次の通りとなります。

給与所得者数: 3,847万人(平成元年) → 5,026万人(平成30年)

給与総額: 154.8兆円(平成元年) → 221.5兆円 (平成30年)

(民間給与実態統計調査より)

この資金循環統計では、家計の資産が嵩上げされているというのも否めません。

大きくは次の2点でしょうか。

・ 年金受給権など将来受給するであろうお金まで資産計上されている

・ 個人事業主の事業性のある資産や負債も計上されている

とはいえ、実は私たち個人の金融資産は増大し続けているという事実は変わらないようです。

少なくとも政治の世界ではそのように捉えられているのでしょう。

(だから、家計は豊かだ、ならば消費税を上げて吐き出させよう、となったのかも。。。という邪推もしたくなりますね)

給与総額は増大していて、家計消費は停滞しているわけですから、家計資産はプラスに積みあがっていくのも道理ですね。

3. 本来は400兆円を超えていた家計最終消費

家計最終消費の推移 国民経済計算

図3 家計最終消費の推移 (国民経済計算 より)

図3は家計最終消費の推移です。

参考: 消費→成長が止まった日本経済

1997年から見事に停滞しているのが分かりますね。

1991年から1997年にかけてのラインを延長すると点線のようになるのですが、2018年には410兆円程度の家計最終消費になっていたはずです。

現在の数値からすると約1.4倍ほどでしょうか。

これは非現実的なラインというわけではなく、年間2%程度の増加としたラインです。

アメリカやドイツなど先進国はほとんどこのラインよりも上のペースで増えているわけですね。

消費が冷え込み日本だけが取り残されている事を示す一つの事例と言えますが、一方で家計資産は増えていたという事も覚えておいた方が良いのではないでしょうか。

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