059 かつて世界一に輝いていた日本

1. 購買力平価とは?

前回は、社会保障負担の増大についてとりあげてみました。

消費税も含めた国税や地方税の税収が停滞する中で、社会保障負担は増え続けています。

消費税収20兆円程度に対して、社会保障負担は今や70兆円以上という驚きの水準に達している事が明らかとなりました。

とはいえ、社会保障負担も含めた国民負担率は、年々増加傾向にあるものの現在のところ国民所得に対して42.8%(GDPに対して約32%)程度です。

北欧などの高負担高福祉国家と比較してもまだ高い水準ではありません。

参考: 中小企業経営で大事なモノとは!?

前回ブログでも様々な方から熱意あるコメントを寄せていただきましたが、日本のこれから目指していくカタチが、まだ定まっていないようにも思えますね。

今回はちょっと目線を変えて、日本が何故現在停滞しているのか、という根本的な部分を考えてみたいと思います。

日本経済は1995~1997年あたりをピークに1人当たりGDP、平均給与が減少し停滞を続けています。

また、1990年あたりをピークに、株価や税収が減少し停滞を続けています。

他の先進国は基本的にはいずれも右肩上がりの傾向です。

どうやら日本経済だけ他の国と異なり、1990~2000年の間にピークを迎え、その後急激に収縮してそのまま停滞しているようです。

私はヒントは物価水準なのではないか、と思っています。

少し頭の整理をしながら進めたいと思いますので、どうかお付き合いください。

GDP等の国際比較をする際に、為替でUSドル換算をしてドル単位での比較をしてきました。

もう一つ国際的な金額の比較をする際に用いられる指標に”購買力平価”というものがあります。

購買力平価(PPP: Purchasing Power Parity)とは、自国通貨と相手国通貨の購買力の比率によって為替レートを説明するものです。

ちょっと表現が難しいので、購買力平価の指標の一つともいえるビッグマック指数について取り上げてみます。

例えばある時点のマクドナルドのビッグマックの価格が日本で300円で、アメリカでは3$だったとします。

この時、購買力平価は300円/3$で、100円/$となります。

通貨としての為替レートが150円/ドルだったとしても、実際のものの価値の比率は100円/$であるという事ですね。

この交換比率である購買力平価を為替レートに代替して変換した方が、実際的なモノの価値を基準に国際比較ができると言われてるようです。

ビッグマック価格とビッグマック指数

図1 ビッグマック価格とビッグマック指数(Economist HP公開データより)

図1が日米のビッグマック価格とビッグマック指数の推移です。

アメリカの価格(青)はオーダーを合わせるために100倍してあります。

アメリカでのビッグマック価格は基本的に右肩上がりですね。

1990年に2$ちょっとだったのが、2020年には5.5$以上と2倍以上に値上がりしています。

日本では1990年に370円で、その後値下がりした後上昇し、2020年では390円と30年前とほとんど変わらない値段です。

当然交換比率である購買力平価(緑:右軸)は右肩下がりで小さくなっていきます。

このように購買力平価は、モノの値段を含めた国家間での交換レートとして表現されるわけですね。

2. 購買力平価と為替の差=物価水準

購買力平価と為替の推移 日本 OECD

図2 購買力平価と為替の推移 (OECD統計データ より)

図2は購買力平価(GDPベース)とドル-円の為替レートの推移です。

参考までに先ほどのビッグマック指数も記載しておきます。

(やや購買力平価よりも数値は小さいですが同じような推移ですね)

ビッグマック指数のように、様々なモノやサービスの国家間の価格比率を購買力平価として計算し、

GDP換算の指数として使用しているのがGDPベースの購買力平価です。

物価指数(CPI)のように、購買力平価の総合的な指数と言えると思います。

実際には購買力平価と為替レートは完全には一致しませんね。

為替レートよりも購買力平価の方が数値が大きかったり、小さかったりします。

これは、通貨の換算価値に対して、実際のモノやサービスの交換比率の価値が割高だったり、割安だったりすることを示します。

この購買力平価を為替レートで割って割高、割安の程度を表す指標が物価水準です。

何故購買力平価を為替レートで割ると物価水準になるのか、イメージしやすいようにビッグマック指数で考えてみます。

まず、ビッグマック指数(購買力平価)が100円/$、為替レートが100円/$だったとします。

この時物価水準は購買力平価と為替が一致しているため1.0ですね。

つまり、アメリカでビッグマックが2$であれば日本でのビッグマックは200円となります。

物価水準が2.0の場合は、アメリカでのビッグマックが2$であれば日本では400円となります(為替レートが100円/$で不変の場合)。

為替換算したら2$は200円であるはずが、モノの価値であるビッグマックには400円の値段が付いているわけですね。

アメリカ人からしたら、アメリカでは2$でビッグマックが食べられるのに、日本では4$支払わなければならないわけです。

つまり、実際的なモノの価値(物価水準)が2倍という割高な状況ですね。

逆に日本人からすると、日本で400円のビッグマックが、アメリカでは200円で食べられることになります。

したがって、購買力平価と為替レートの比率が、通貨の交換価値に対して、実際に国家間でのモノの価値が割安になっているのか割高になっているのかという物価水準となるわけですね。

(説明下手ですみません)

例えば物価を測るモノサシとして、消費者物価指数やGDPデフレータなどがありますが、これらは1国内でどのように物価が変化しているかを示すだけで、国家間の物価のレベルを比較する指標としては使えません。

しかし、この購買力平価から算出される物価水準は、国家間での物価を比較できるモノサシと言えるのではないでしょうか。

あの国は物価が高い、などという場合の物価とは、まさにこのような物価水準の事を示しますね。

3. 世界最高の物価水準を誇った日本

物価水準 GDPベース OECD

図3 物価水準の推移 (OECD統計データ より)

図3に主要国のアメリカ(ドル)に対する物価水準の推移を示します。

OECDの購買力平価(GDPベース)を為替レート(対ドル、年平均)で除した数値です。

1960年からの長期データとなります。

日本(青)は、1960年には物価水準は0.47でした。

アメリカの約半分の物価水準でしかなかったわけですね。

それがぐんぐんと伸びて、1995年に1.86となります。

この頃日本は物価が高い事で知られるスイスを抜いて、世界一の物価水準を誇っていたわけですね。

なんとこの頃はアメリカの2倍近くの物価水準でした。

1985年あたりまではドイツやイギリス、フランスなどの主要国と同じような水準で推移していたのですが、1985年以降は急激に伸びて以降2000年あたりまで断トツで高い物価水準が続きました。

それが今や1.0を割り込み、他の主要国と比べても大差はありません。

この物価水準のグラフは、下記の日経平均株価や1人当たりGDPとの相関関係が高いのも興味深いですね。

(為替も影響しているので当たり前なのでしょうが。。)

日経平均株価 平均給与 1人当たりGDP

図4 日経平均株価の推移

1人当たりGDP 主要国

図5 1人当たりGDPの推移

参考: 長期データで日本経済を振り返る

参考: 長期データで世界経済を振り返る

4. 日本経済停滞の要因とは?

さて、なんだか小難しい話になってしまいましたが、上記から考えられる事を私なりに考察してみます。

まず日本経済は、1980年代後半からバブルとなり、実際の実力値よりも株価や物価水準が大きく評価され、それに引きずられて他の先進国よりも”先行”して急激に経済発展しました。

高度成長期を終えても、1人当たりGDPや給与水準が順調に増加したのもこのためかと思います。

1990年のバブル崩壊を契機に、1995年頃をピークにその嵩上げされた状態から低下し、その後横ばいの状況が続きます。

その間にドイツ、イギリス、フランス等の他の先進国の成長があり、2005年あたりに同じような水準に落ち着いた、といった経緯なのではないでしょうか。

つまり、バブルにより本来の実力値よりも早期に経済発展してしまった分、本来的な実力値に戻るまで停滞を続けていたというわけです。

そして2010年あたりから1人当たりGDPや、平均給与がややプラスに転じているのは、他の先進国と同様の実力相応の低成長軌道に入ったから、と受け取れなくもありません。

大きな目線で見ると、このような理解もできるのではないでしょうか。

要はブーストがかかって急激に経済発展した分、息切れして停滞していたら他国に追いつかれた、という状況ですね。

問題は、この後どのように推移するかですね、、

当然コロナショックや消費増税による消費低迷などの影響も出てくるでしょうから、このまま低迷→衰退が続かないよう祈るばかりです。

少しとりとめもない話になってしまいましたが、今回は購買力平価と物価水準について取り上げてみました。

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