中小企業が主役となる時代へ

1. 日本経済の特徴

今回はいったん、これらのデータを踏まえたうえで、私の考える今後の日本経済の中で重要だと思うポイントを述べたいと思います。

それは、「中小企業経営者が経済を変えていく」という事です。

順を追って述べさせていただきます。

まずは、現在までの日本経済の特徴や変遷を振り返ってみましょう。

・ 世界経済が右肩上がりに成長を続ける中、日本では1997年ころをピークにGDPや労働者の給与が下がり停滞している

 参考: サラリーマンの貧困化 

 参考: 長期データで日本経済を振り返る

 参考: 日本経済の「栄光」と「凋落」を可視化してみる

・ グローバリズムの進展に伴って、ビジネスの海外展開が進んでいる

  日本だけ流出過多の「日本型グローバリズム」というべき状況になっており、国内の労働者や中小企業が取り残されている

 参考: 日本型グローバリズムの急進展

・ 主に大企業は近年業績が向上しているが、利益の大部分を配当金と内部留保に回している

 参考: 内部留保は衰退への道? 損益編

・ 日本企業の99%は中小企業であり、日本人労働者の多く(60%以上)は中小企業で働いている

・ 中小企業と大企業との生産性、給与の格差が大きい

 参考: 「仕事」の価値を見直そう! 企業間格差編

・ 本来、日本人労働者は世界でもとりわけ優秀なはず

 参考: お金以外の豊かさとは!? 教育編

・ 優秀なはずの日本人労働者の生産性は先進国の中でも低い水準が続いている

 参考: 果たして日本は先進国か 労働生産性編

・ 日本人労働者の貧困化や格差の拡大は進んでいるが、不安を感じながらも今の生活に満足感を感じている人が多い

 参考: 貧困化しても満足度アップ!日本人の不思議

私が感じるのは、現在進行しているグローバリズムと、国民生活(主に労働者としての)が乖離していて、大部分の日本人(多くの労働者)がこの流れから取り残されているのではないか、という事です。

私も含めて多くの日本人が、現在の自分たちの生活や仕事に閉塞感や行き詰まりを感じている一方で、一部の人が豊かさを享受しているのは間違いなさそうです。

少子高齢化がこのまま進む事が明白である以上、社会保障費の増加、安全保障の懸念も増大する中で、最も大事な国民生活がこのまま悪化していって良いのでしょうか。

今のところは何とか持ちこたえている国民生活も、日に日に悪化していることは明白です。

このままでは一億総茹でガエル状態となってもおかしくはないのではないでしょうか。

日本人の労働者(多くの日本国民)が、グローバル化の流れから取り残されている事実があり、この先大きな打開策となるような見通しが無い中で、私たちはどのように行動していけばよいのでしょうか。

2. 中小企業の役割

私は、この閉塞感を打破するキーパーソンが、「中小企業経営者」だと思います。

300万社ほどあるといわれる日本の企業の99.7%が中小企業と言われます。

つまり300万人も社長(経営者)がいるわけです。

中小企業で働く労働者も全体の6割以上です。

特に製造業では大企業はグローバルビジネスとなっているケースが多く、「日本型グローバリズム」によって、多くの日本人労働者の収入にはあまり寄与しません。

(日本を含めグローバル企業の製品が安価なことで、消費者としては恩恵を受けますが)

したがって、多くの日本人労働者を雇用している、中小企業の経営者こそ、国民生活を転換しうるキーパーソンと考えます。

中小企業の数が多いことが問題視されがちですが、より正確には「生産性の低い」中小企業が多いことが問題なのだと思います。

したがって、生産性の低い中小企業が減っていくことと、中小企業が付加価値を高めて存在感を高める事、は別問題と考えます。

※ 本ブログでは「高付加価値」とは「高額商品」ではなく、「労働に対する相応の対価を生じる」という意味です

本来世界的に見ても極めて優秀な日本人の労働者が、これだけ“稼げていない人材”に落ちぶれてしまっているのも、“付加価値の低い仕事”しか生み出せない経営者の責任といっても過言ではないと思います。

優秀な労働者を使いこなし、付加価値の高いビジネスを創出し、それに見合う対価を支払う事こそが企業経営者としての最も重要な仕事と考えます。

今は、優秀な労働者を使い捨て、付加価値の低い仕事に群がり、それに見合う対価すら出し渋る経営者があまりに多いのではないでしょうか。

現在は大企業ほどグローバルビジネスに巻き込まれ、世界を相手に鎬を削る中、国内中小企業の労働者だけが取り残されています。

一方で、国内ビジネスでは、「安価な労働者」が足りなくて人手不足と言われています。

私たち製造業(町工場)はもとより、コンビニ店員、介護士、保育士なども低賃金労働の代名詞といえます。

さらに、自動化が進むことによって、単純労働は「外国人労働者」から「自動化された手段」に置き換わっていきます。

大企業ほど「資本主義」の原理に基づき、利益を追求していきますから、必然的に自動化された手段への代替が加速されます。

資本を集約して、特定の製品やサービスを大規模に効率的に生み出すのが大企業の得意なところでしょう。

製造業のロボット化は昔からの取り組みですが、AIや情報化の発達もあり、銀行員の大失業時代を迎えるなど、他の産業や職種でもこの傾向に拍車がかかっています。

残されたのは、(当面は)人にしかできない高付加価値な仕事か、機械を使うよりも安い安価な労働(ギグエコ等も含め)となるのではないでしょうか。

これからは大企業ほど労働者が不要になっていき、そこであぶれた人材は必然的に中小企業が受け皿となるのではないでしょうか。

一方で中小企業は、規模が小さいことからも、時代の変化に合わせたビジネスの転換が比較的容易です。

オーナー経営者も多く、長期的な視点で経営を考えることができまし、経営者の意思決定から社内の変革をスピーディに行えます。

現在、中小企業の多くは事業継承の壁にぶつかっています。

継承者のいない収益性の低い企業が倒産、廃業により一気に淘汰が進み、中小企業の数は大きく減少しています。

一方で、若手の経営者にうまく継承が行われ、高収益な事業に転換した企業も多いのです。

このように国内中小企業は、明らかに「低生産性事業」と「高付加価値事業」に二極化が進み、前者はまだまだ多いですが淘汰が進んでいます。

今後は、大企業による効率化、大規模化、自働化が先鋭化する一方で、大企業ではカバーできない隙間(ニッチ領域)は増えると思います。

そこで「優秀な日本人労働者」による「高付加価値なモノやサービス」を供給する中小企業の役割は重要性を増すのではないでしょうか。

大きく言えば、大企業によるグローバルビジネス(大規模・低価格)と、中小企業による国産ビジネス(多様・高付加価値)に二極化していくのではないかと思うのです。

グローバルビジネスは日本人労働者の必要性が減る一方で、国産ビジネスではすでに「安価な労働力」に落ちぶれてしまった日本人労働者の「高品質な仕事」を高く売るチャンスだと思います。

当然国産ビジネスは、規模を求めるビジネスから多様性に応えるビジネスに代わっていくという前提となります。

(ここでは競合が海外のビジネスをグローバルビジネスとし、国内で競争して海外に販売するビジネスは輸出ビジネス、国内で販売する場合は国内ビジネス、輸出ビジネス+国内ビジネスを国産ビジネスととらえます)

今後は、日本人の多くが、高付加価値ビジネスをしている中小企業で働き、継続的に収入が増える中で、支出も増やしていくような社会を目指すべきではないでしょうか。

もちろんグローバルビジネスにより大量に安価に入手できる製品やサービスに囲まれながら、一方で国産の品質の良いプチ贅沢品も消費します。

つまり、グローバルビジネスと国産ビジネスのいいところどりをした、豊かな生活を享受するわけです。

このような将来を描くことも十分に可能な局面なのではないかと思うのです。

中小企業経営者としては、投資により従業員1人当たりの生産性を向上させ、国内ビジネスはもちろん、海外(特に欧米)向けの高付加価値品を輸出する。

このように考えることはできないでしょうか。

先進国でもとりわけ日本の労働者の生産性は低く、その中でも大企業と中小企業の格差があるわけですから、特に中小企業では生産性を上げて収益を出しながら、従業員の給与を上げていく余地は大いにあるのではないでしょうか。

海外からすれば、優秀な日本人労働者の労働力が極めて割安なわけです。

現在の日本人労働者の平均的な生産性は4,200円/時間程度です。

中小企業の生産性は、2,500~3,500円/時間といったところではないでしょうか。

1,500~2,000円/時間程度の企業も少なくないと思います。

(実感値としてはこちらのほうが主流?な感じがします)

はっきり申し上げれば、従業員の能力やアウトプットからすると本来もっと付加価値を付けるべき仕事の成果を、経営者が”安売り”していると言っても過言ではないと思います。

つまり値付け感があまりにも低いという事です。

これが、中小企業が”生産性が低い”と言われる正体なのではないかと思うのです。

そのしわ寄せが、中小企業の従業員の給与水準の低さに表れているのではないでしょうか。

ドイツやアメリカ並みを標準とするならば、中小企業といえど6,000円/時間まで高めることは十分に可能なはずです。

3. 事業転換のススメ

現在高付加価値ビジネスに転換している多くの中小企業経営者様とお話をさせていただいて、共通する部分を書き出してみます。 

あくまでもモデルは受託製造をメインとする製造業なので、企業規模や業界によって感覚が異なることも多いと思いますので、その際にはご容赦ください。

① 自社の属性や業務を棚卸し、個別のビジネスについて生産性を把握・評価する

 グローバルビジネス追随型、国産ビジネス型といった顧客や競合との関係による属性は把握していますか?

 それぞれのビジネスでしっかりと労働者が付加価値を生み出せていますか?

 まずはビジネスの棚卸を行って、付加価値を生むべき従業員の生産性を評価してみてはいかがでしょうか

 製造の担当者ならば、例えば1時間に4,500円稼げているかどうか、などです

② 投資(人材投資、設備投資、技術投資)を通じて生産性の向上を図る

 本来投資により解決する問題を、従業員の努力や犠牲に頼っていませんか?

 これからは高付加価値な労働集約型ビジネスこそ利益の源泉とも言えるかもしれません

 誰でもできる仕事ではなく、その人しかできないスペシャリティの高い仕事に投資してはどうでしょうか(人材投資)

 もちろん、企業経営ですから、情報化(IT投資)、独自技術の開発(技術投資)、先端設備の導入(設備投資)も必要です

 設備投資はもちろん設備メーカーや施工業者の収益にもなります

③ 適正価格を割り込むビジネスは値上げを行う

 今ある仕事にしがみつきすぎて格安のビジネスを続けていませんか?

 ビジネスの棚卸をした結果、明らかに安価な仕事が存在した場合、どうしますか?

 まずは値段を上げる交渉をしてみてはいかがでしょうか。

 B to Cビジネスは色々な戦略があると思いますので言及しませんが、B to Bビジネスは大いにその余地があるのではないでしょうか。

 国内でも自社の1/3程度で請け負う会社もあれば、倍以上で請け負う会社もあると考えれば、そのビジネスに固執する必要はないのではないでしょうか

④ 取引する顧客、パートナーを評価し、場合によっては取引を中止する

 そのビジネスは自社にとって必要でしょうか?

 利益にならないビジネスや顧客は勇気をもって離れる必要もあるのではないでしょうか?

 最もやってはいけないのが、会社を存続させることばかり優先して、無理な取引を続け、従業員の給与を下げたり、補助金頼みのゾンビ企業となる事ですね

 現在はあまりにもゾンビ企業が多すぎますが、自分もそうなっていないか今一度振り返ってみてはいかがでしょうか

 事業領域によっては、顧客が私たちサプライヤーを選ぶのではなく、私たちサプライヤーが顧客を選ぶ時代になると思います

 今だに「他社より安ければ転注する」などと言ってくる呑気な顧客がいますが、そういった関係性はもう終わりにする時ではないでしょうか

⑤ 従業員の給与を上げていく(成果や能力連動でも良い)

 利益にならないビジネスを従業員の給与に転嫁していませんか?

 従業員の能力や貢献によって相応の対価を支払うのは当然ですね

 安価な労働力を求め続けるグローバルビジネスではなく、雇用という社会貢献に寄与する国内ビジネスでは「どれだけ従業員の給与を上げられたか」が経営者として大事な要素になるのではないでしょうか

⑥ 値引き競争をしない (特にグローバルビジネスからの距離を取る)

 利益にならないビジネスに値引きでしがみつくほど経営者として愚かな判断はないのではないでしょうか

 何度も言いますが、同じような仕事を自社の1/3の対価で受ける企業もあれば、倍以上で受ける企業もあるのが現在の「常識」です

 相場といものは、既にどこにもありません

 値段を下げないと仕事にならないのでは、自社の製品やサービスにそれだけの価値が無いという事になります

 値段を下げて仕事を受注するのは経営者としても営業担当者としても簡単ですが、結局従業員に負担がかかり長続きしないはずです

 値引きはゾンビ化への入り口という事を肝に銘じておく必要があるのではないでしょうか 

⑦ 顧客と対等なパートナーシップを結ぶ

 顧客は「お客様」ではありますが、それが「ご主人様」になっていませんか?

 「製造」などの自社のスペシャリティを売るわけですから、プロフェッショナルとして顧客との対等なパートナーシップは当たり前です

 ビジネスの流れとして「下請け」という立ち位置は構わないと思いますが、何でもいいなりの「僕(しもべ)」になっていないでしょうか

 設計、配送、品質保証、あらゆる面で対価も要求せずに顧客におもねる企業が多いですね

 顧客の過剰な要求に応えようとしすぎて一方的に疲弊し、廃業を余儀なくされた企業も数多く見てきました

 顧客と共生ではなく、顧客に寄生されている企業があまりに多いのが残念な限りです(特に製造業ではその傾向が強いと思います)

 お互いにWin-Winなパートナーシップを結べないでしょうか

4. クラスタ化のススメ

ちょっと限定的な分野になりますが、中小製造業についての話をさせていただきます。

中小製造業で顧客とパートナーシップを結ぶ一つのアイディアとして、「中小製造業クラスタ」を構築する事も良いのではないでしょうか。

中小製造業クラスタとは、顧客の窓口となる「ハブ企業」と、それぞれの分野で特化した技術を持つ「パートナー企業」が、ハブ企業を中心とした弱い連携のグループを作り、グループ全体としての多様性を提供するという事です。

既にそういった形はいたるところにありますので、それっぽく名前を付けただけですが、、

ハブ企業は、顧客の要求を咀嚼、細分化し、パートナー企業に依頼展開して、とりまとめを行います。

パートナー企業の営業代行を兼ねるとともに、インテグレータの役割を果たします。(いわゆる”商社”とは異なります)

ハブ企業は顧客要求のブレークダウンだけではなく、顧客とのパートナーシップを結び、対等な立場で一緒に製品や部品を作り出すという役割を果たします。

したがって、技術的な内容についても受け身ではなく、主体的な支援を行います。

もちろん、顧客や案件によってはハブ企業とパートナー企業が入れ替わっても良いですし、クラスタ同士の連携も積極的に行うのが良いと思います。

あくまでもハブ企業とパートナー企業で役割分担をして、連携して仕事を融通しあう事を意図します。

クラスタ内ではお互いに知り尽くしているからこその、信頼関係からの迅速な対応、最適なマッチングなどの利点も併せて提供できます。

お互いがお互いの営業代行をすることにもなります。

ありがちな官主導の「中小企業連携」などとは性質が異なります。

これにより、クラスタ全体として、顧客に「多様性」を提供することができます。

グローバル化、効率化、大規模化が進むと、最も失われるのがこの「多様性」となりますので、中小企業は多様性こそ自分たちの高付加価値サービスの源泉とすべきと思います。

ハブ企業は、インテグレータとして、顧客(主にメーカー)のニーズを汲み取るだけでなく、企画や設計・開発などより上流に「製造のプロフェッショナル」として関与します。

当然、顧客側も従来の受発注プロセスを見直す必要も出てくるかもしれません。

また、設計等、初期段階でリスクの顕在化していない技術的な内容等に関しては、顧客とサプライヤーでリスクを分担する必要もあると思います。

今までのようにサプライヤーが一方的にリスクを負う関係は改めるべきです。

大企業ほど製造現場との乖離も進んでいますし、ベテランエンジニアが激減し、製造の知識に乏しい若手エンジニアが増えています。

その足りないところを、むしろ私たち従来下請けだった存在が、より上流から埋める役割を果たすわけです。

今まさに、製造のプロフェッショナル集団として、存在感を示すことのできるタイミングなのだと思います。

顧客サイドとのかかわり方を、このように転換し、対等なパートナーとしての関係を構築する事が今後の製造業には必須となってくるのではないでしょうか。

既にこのような関係性を構築している企業も多いと思いますが、まだまだ顧客→商社→元受け→個別製造業などといった下請け構造が根強く、顧客要求が絶対の風潮が強いのが実情だと思います。

対等なパートナーとして、顧客の特に技術部門に対して、より的確なアドバイスや助言をしながら、最も合理的な製品づくりができれば、お互いにWin-Winな取引になりやすいですし、最終消費者に対しても良いモノを提供できるのではないかと思います。

肝要なのは、顧客と供給者が課題を共有して、パートナーとして一緒になって付加価値を作り出していく事だと思います。

極端なことを言えば、ビジネスによっては従来顧客だった企業にパートナー側に入ってもらっても良いのではないでしょうか。

従来型の発注者-サプライヤーという上下関係では考えられないことですが、クラスタとして対等なパートナーシップを構築できているならば、何ら障壁はないはずです。

こういった事業の転換を進めることで、同じ日本人の仕事を、お互いに認め合う風潮が出てくると良いな、と思っています。

中小製造クラスタのイメージ

図1 中小製造業クラスタのイメージ

グローバル化が更に進む今後においては、中小企業の経営者とそこで働く労働者(多くの国民)こそ、むしろ主役になれる時代ではないでしょうか。

皆さんはどのように考えますか?

このブログの主旨にご賛同いただき、応援していただけるようであれば、

是非下記バナークリックにてアクセスアップにご協力いただけると嬉しいです。

にほんブログ村 経営ブログへ
にほんブログ村