貧困化しても満足度アップ!日本人の不思議

1. 私たちは何に満足しているのだろうか

前回は、日本だけがビジネスの流出(Outward)ばかりで流入(Inward)のほとんど無い「日本型グローバリズム」の実態について取り上げました。

いつの間にか日本人の多くの仕事が海外に流出している実態が明らかとなりました。

私達は仕事を取り上げられ、貧困化している中で、何を拠り所としているのでしょうか。

メディアなどでは、最近株高がしきりに取り上げられます。

大企業や証券会社に勤めているわけでもなく、自分が株式投資しているわけでもないのに、

日経平均株価の変動に一喜一憂する人が多いように感じます。

企業の株価と私たちのお給料は、どれだけ関係しているのでしょうか。

今回はまずこの点について取り上げてみます。

日経平均株価と企業規模別平均給与 満足度

図1 日経平均株価と企業別平均給与・生活に関する満足感DI

(日本経済新聞社:日経平均株価データ、内閣府:生活に関する世論調査 などより)

図1に日経平均株価と平均給与を重ね合わせたグラフを示します。

ちょうど都合よく両方とも1949年からの長期データがありましたので掲載させていただきます。

日経平均株価は日本経済新聞社の長期データより、各年の終値をグラフ化しています。

日経平均株価は左軸、平均給与は右軸となります。

うまく重ね合わさるようにスケールを調整してあります。

平均給与は全体の平均給与(赤)、10人以下の小規模企業の平均給与(緑)、100人以下の中小規模企業の平均給与(水色)、5000人以上の大企業(紫)のグラフを示します。

まず注目していただきたいのは、1981年頃までは日経平均株価と平均給与の伸び具合がかなり一致する事です。

この時代は、企業の業績と個人の所得が連動して急成長していたわけですね。

この時期で抑えておきたいのは1973年のオイルショックでしょうか。

急激に伸びると思われていた株価が腰折れし、平均給与の伸びもやや鈍化しています。

その後は、株価の急激な伸びに対して、平均給与の伸びはさらに鈍化し、乖離が大きくなります。

株価の伸びはもちろんバブルによるものですね。

1989-1990年のバブル崩壊を受けて、株価は大きく下がり、その後現在に至るまで大きく減少と増加を繰り返します。

それに対して、平均給与はバブル崩壊から一歩遅れて1997年頃にピークを迎え、その後徐々に下がりながら、直近では若干戻っています。

2008年のリーマンショックによる株価の急落時には(特に大企業で)多少の平均給与の減少がみられるものの、

平均給与の変動と株価にはほとんど相関が見られません。

以前取り上げた通り、この間グローバル企業の海外展開が進み、企業の内部留保が増大している中で、人件費が抑制され続けています。

 ・ 海外展開の進展: 日本型グローバリズムの急進展

 ・ 内部留保の増大: 内部留保は衰退への道!? 損益編

 ・ 人件費の抑制: 内部留保は衰退への道!? まとめ編

ここ数年の株価の伸びに対して中小規模の平均給与は多少増加していますが、

大企業の平均給与は横ばいのままです。

大企業の方が株価増加の影響が給与に反映されやすいのかと思いましたが、むしろ逆の現象が起こっているようです。

海外展開が急増している影響なのか、興味深いですね。

次に、グラフ中のオレンジ色のラインは、「現在の生活に対する満足度」DIです。

内閣府の「国民生活に関する世論調査」のデータを使用しています。

平均給与とスケールを合わせるために、本来の数値を100倍して表示してあります。

DIとは、Diffusion Indexの略で、ある選択肢の百分率と他の選択肢の百分率の差によって算出されます。

この場合、”現在の生活に対して満足”(満足している+まあ満足しているの合計)の割合[%]と、

”不満”(やや不満だ+不満だの合計)の割合[%]の差となります。

つまり、この数値がプラスだと満足している人の割合の方が大きく、マイナスだと不満だと感じている人の割合が多いことを示します。

この満足度は、お給料が停滞(むしろ減少)しているにも関わらず増大、減少を繰り返しています。

よく見てみると、株価の増減とほぼ同期している動きを示している事がわかります。

なんと私達は、自分のお給料よりも、それとはほぼ関係のない株価の増減に対して満足度が影響されているように見えるのです。

私としては、平均給与の停滞(減少)と同期して満足度も下がるものと思ってグラフ化したのですが、

結果は狙いとは全く違ったものでした。

むしろ平均給与よりも株価と同期して満足度が増減していたわけです。

この結果に私は正直違和感を感じました。

(社会学者の古市さんも世論調査の違和感について指摘をしているそうですが、今度著書等を読んで勉強してみます)

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<追記>

世論調査結果については、近年インターネットなどでも色々と指摘がなされているようです。

調査対象者の持家割合が8割以上だったり、多くが既婚者だという事が言われており、

対象者の分布にある程度の偏りがある事を前提に結果を眺めた方が良さそうです。

この分布の偏りについては、調査票に記載されているようなので、次回詳述します。

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過去に株価と給与が連動していた時代の一体感を引きずっているのか、

日本人として日本企業の躍進に心躍らせているのか、

何とも不思議です。

ある方のご指摘により、こういった解釈もできる事がわかりました。

自分のお給料が増えるよりも、関係する企業が倒産や買収されるリスクを感じたり、日本経済全体の行く末が落ち込むのを感じる方が、怖かったり不安だという事です。

日本人として、自分が経済的には困窮しても、全体としての行く末に不安が無くなれば安心できる、という事ですね。

確かにこのような感覚を持っている方が大変多いのではないでしょうか。

それでは、私達は本当に経済的に困窮していても満足感を得られるものなのでしょうか。

2. 生活満足度はどの程度?

生活満足度と向上感

図2 生活の満足度と向上感 (国民生活に関する世論調査 より)

念のため、同じ世論調査で「現在の生活に対する満足度」DIと「去年と比べた生活の向上感」DIを比較したグラフを図2に示します。

去年と比べた生活の向上感DIは、「向上している」から「低下している」を差し引いた数値です。

プラスになれば去年よりも生活が向上している人の方が多い事を示し、マイナスであれば生活が低下している人の方が多いことを示します。

グラフを見る限りでは、「現在の生活に対する満足度」は基本的にプラスなので現在の生活に満足している人が多いことがわかります。

「去年と比べた向上感」は1974年に一気に下がり、そこから常にマイナスの状態が続きます。

つまり、国民の感じる生活レベルは、1973年のオイルショックを契機に、常に”低下し続けている”事を示します。

私達は、生活が年々苦しくなることを実感しながらも、満足感が高いわけですね。

この向上感と満足感は特に近年では大きく相関がある様子が見て取れます。

向上感はマイナスでも、その具合が和らぐと満足度が増加していく関係にあるようです。

3. 日本人の特殊な価値観

(度合いが軽減されているとはいえ)貧困化が進んでいると実感しながらも、生活に満足できているのですから、

私たち日本人は、なんとも不思議な国民だと言えそうです。

実はデフレが続く一つの大きな要因が、この日本人の独特な国民性なのではないかとも思うのです。

自分たちのお給料が減っていても、企業業績が良くなり、なんとなく”景気が良い”と聞けば満足感が高まるのです。

本来は、「人件費を下げて業績を伸ばしたい企業経営者」と、「労働の対価としてのお給料を増やして欲しい労働者」とは利害が対立するはずです。

しかし、この統計結果を見る限りでは、企業経営者と労働者の求めるものが一致するわけですね。

デフレ下で貧困化が進んでも、満足感を得られる国民ですから、企業からすればありがたい限りです。

でも本当にそれで良いのでしょうか??

私達企業経営者は、このような日本人的な我慢強さや律義さなどの特性に頼りきってはいないでしょうか。

業績を守るために、従業員の賃金を減らしても、きっとわかってくれる、と甘えてはいないでしょうか。

そして私達日本人は何に満足し、何に不満を覚えるのでしょうか。

次回はもう少し詳細に取り上げてみたいと思います。

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