005 内部留保は衰退への道? まとめ編

1. 付加価値分配の変化とは!?

前回は、法人企業統計調査のうち、”損益”を取り上げながら、売上高が上がらないながらも、原価低減により営業利益を確保し、税率の低下も相まって、当期純利益が増大、そのうち配当金を増やしながらも、内部留保を増やしていくという企業の姿を見てきました。

今回は、「法人企業統計調査」から、売上総利益、いわゆる付加価値額の内訳を詳細にみていく事にします。

付加価値分配 全産業

図1 付加価値分配 全産業 (法人企業統計調査 より)

図1に付加価値の分配をグラフ化しました。

棒グラフの合計値が付加価値の総額、水色がそのうちの人件費、オレンジが支払利息等、紫色が動産・不動産賃借、緑色が租税公課、黄色が営業純益を示します。

営業純益=営業利益-支払利息等です。

単位は[千億円]です。

まず目につくのが、営業純益の増大です。

1997年の時点で16.1兆円だった営業純益が、直近の2017年では61.2兆円となり、35.1兆円増加(3.8倍)しています。

営業純益は営業利益-支払利息等となっておりますが、支払利息等は1997年の17.0兆円から6.2兆円に激減しています。

この支払利息の寄与も大いにありますが、それ以上に営業純益が増大しているのです。

次に目につくのが、水色の人件費がほぼ横ばいである事です。

付加価値総額に対する人件費の割合を折れ線グラフ(赤色)でプロットしてみました。

1997年で73.7%ですが、直近の2017年では66.2%と実に7ポイント以上も下がっています。

2008年、2009年のリーマンショック前後で一度急激に上がりますが、趨勢的に減少していることがわかります。

人件費を増やさずに利益を増やしている、逆に言えば付加価値総額に対する人件費の割合を減らしているわけです。

支払利息が激減している背景についても考えてみましょう。

ここで考えられるのは、①企業の借り入れそのものが減少している、②金利が下がっている、という2点でしょうか。

金利については、後日考えるとして、企業の借り入れについて少し取り上げてみます。

2. 企業が借金をしなくなった!!

法人企業統計調査 貸借の中から、固定負債の中の長期借入金、流動負債の中の短期借入金を抜き出してみます。

貸借 借入金推移

図2 貸借 借入金推移 (法人企業統計調査 より)

長期借入金はほぼ横ばいで推移していますが、短期借入金については趨勢的に減少を続けています。

借入金合計で見ると、近年では増加しつつありますが、ピークと比べると実に100兆円減少していることがわかります。

今まで見てきた通り、内部留保が積みあがっている状態ですので、運転資金などの資金需要が減り、借入金が減少しているという事なのでしょう。

資本主義経済の仕組みは、事業者が借入をおこして、投資を行い、生産性を向上させて、利益を増大させるというものです。

借入=融資は、現代の貨幣感で言えば、信用創造と言われる通り、経済の中で流通する貨幣を生み出す行為です。

借入金を増やす程、経済の中で流通する貨幣が増えるという事になります。

その借入金が、20年間で100兆円減少していますので、日本経済全体から100兆円が消失してしまった事を意味します。

やや家計的な感覚から乖離しますが、借入金を増大させながら、投資を進め、ビジネスを大きくして利益を増大させる事が、資本主義経済の本筋となります。

借入金の分だけ、経済全体のパイが大きくなるとも言えます。

その意味では、必要以上に内部留保を積み上げる事は、活用されない資金を貯め込む行為となり、経済全体の向上に寄与しません。

また、借入金を必要以上に早く返す事も、経済全体の向上には寄与しない事になります。

利益剰余金の使途としては、あくまでも企業活動に資する、人材投資、設備投資、技術投資に資金を投じる必要があると思うのです。

その意味では、人件費が横ばいとなっている以上、十分に人材投資が行われていない事は明白でしょう。

設備投資も十分でない事もわかりました。

救いと言えるのは、特許権、商標権なども含まれる無形固定資産が、1997年では12.4兆円だったのが、2017年でほぼ倍の24.5兆円となっている事くらいです。

これは技術投資の一つの結果と言っても良いのではないでしょうか。

私が単純に思うのは、内部留保により資金が活用されないのであれば、従業員の給与を増やせば良いのではないでしょうか。

給与を増やせば、高度な人材が集まったり、従業員のモチベーションが上がります。

あるいは人材教育にお金を使う事で、今いる従業員の能力が向上する事になります。

いずれにしても、企業の生産性にプラスに働く事は明白でしょう。

それよりも重要なのは、当然所得が上がれば消費も増える方向になる事です。

もっとも所得が上がり続けるという確信を持てる事が前提になると思います。

誰でもそうだと思いますが、一時的に所得が上がっても、将来下がるかもしれないと考えると消費を控えるからです。

ここで私が主張したいのは、企業経営者がリスクを取って、投資(特に給与アップを含めた人材投資)を行う事です。

その余力が十分にあるはずなのは、既にみてきた通りです。

特に若年層の貧困化による未婚化→少子化が進んでいる事がメディアなどでも取り沙汰されるようになりました。

人件費を正当な水準に継続的に上げていき、経済を好循環に戻していく決断は、政府ではなく企業経営者にしかできない事なのではないかと思います。

日本の労働者が、ごく普通に家庭を持ち、中流の生活を送れる世の中を取り戻す事ができるのは、企業経営者の決断如何ではないでしょうか。

企業経営者であるあなたは、どのように考えますか?

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